台風の日
朝起きたら、雨の音がした。
ぽつぽつと窓に、しとしとと地面に、水が跳ねる音。
幸いまだ風は強くないらしい。
ニュースで強い台風だと騒がれていたから、恐怖心を煽られ、びくびくとしていたけれど、朝起きて、普通の雨音で安心した。
昨日は、2社とも転職の面接に落ちてしまった。
切り替えるしかないので、考えないようにして、1つ面接を受け、会社の人とご飯に行った。
美味しい和食のお店だったので、私にしては珍しくたくさん食べた。
白玉のせ抹茶アイスのデザートまで食べた。
朝、胃もたれしている。
それだけのことで、泣きたい。
私にとっては、それだけのことではない。
人生のプレッシャーが消化しきれていないのだ。
他のみんなは、こんなことで泣きたくはならないのだろうか。
私には、お酒を飲んで発散することがない。
飲んでしんどくなるなんて本末転倒でしかない。
自分の体調が悪いことに耐えられない。
むしろその方が、死んでしまいたくなる。
だからこうして文章を書く。
思っていることを、誰の目も気にせずに全部書くのだ。
どうせ恋人はわかってくれないのだ。
愚痴なんて普通聞かされたくないし、大丈夫なのだろうか、と思わせるだけ。
愚痴を言うより、前向きなことを発信した方が味方になってくれるし、残念だったね、と労ってくれる。
ああ、そうしたら優しくしてくれるんだ。
結局、私が落ちることにたえられないんだ。
私はいつも、悲しみを感じ抜くことでしか、そこを癒せないのに、何でみんなわからないんだろう。
感情は、感じ抜かないと、塵のように積もって別の場所に顔を出す。
体の不調や、心の不調として。果ては、人を傷つけることとして。
どうしてみんな、考えずに生きられるのだろう。
私には、放置することの方が危険なことでしかなかったし、大きな声は苦手だし、煩い飲みの場も苦手だ。たくさん食べることも、1人の暗くて静かで柔らかな場所がないことも、独りで眠ることも。
その度に、胃が痛くなったり、動悸がしたり、眠れなくなったり、食欲がなくなったりする。そして泣きたくなるのだ。
わかってもらうことは、諦めるしかないのだろうか。
どうせわからないのだろう、この辛さも、苦しさも。
それでも私は書き続ける。それなら私は書き続ける。
いつかわかってもらうために。自分はわかってあげられるように。誰かにわかってほしい人のために、同じ人もいるよってことを。