ジョバンニとねこ

繊細すぎてあまりわかってもらえない心を吐き出す場所。

忘れられない人がいるということ

彼と別れて8ヶ月が経った。

その間に秋が過ぎて、冬が来て、春も去ろうとしている。

 

最近は、別れた日の苦しみから考えると、随分と楽になった。息ができなくなるほど心臓が痛むことは少なくなったし、辛さから彼を早く忘れなきゃ、だから泣いちゃだめだと制限することはしなくなった。新しい恋を無理にしようとすることも辞めた。ずっと好きでいいし、連絡を取りたいなら取ればいいし、泣きたくなったら泣けばいいし、悲しくても仕方ないと思えるようになった。8ヶ月間苦しんで、やっとここまで来た。

 

 

いままた、彼と過ごした夏が来ようとしている。

夏の気温が、日差しが、匂いが、湿度が、やはり私を締め付ける。

 

こんな夏の匂いのする、絶望の淵を彷徨っていたあの日、彼は私を気にかけてくれた。1人で必死に頑張っていた私の不安を、一緒に考えて寄り添ってくれた。ユーモアで心を軽くしてくれた。

 

あの頃、彼がいたから、私は東京を好きになれた。会社が私の居場所になった。

私が今、こうして生きているのは彼に出会ったからでしかないのだと、会社帰りに、晴れた天気の良い日に、不安なく過ごせる日々に、いつも思う。

 

これから生きていても、もう彼ほど誰かを好きに、大事に思うことはないのだと思う。もう一生、誰といても忘れられないのだと思う。

 

彼がくれる悲しみすら、私は愛してしまう。

 

忘れられない人がいるということは、苦しいことじゃない。悲しいことでもない。

泣いてしまったとしても、思うままにずっと好きでいられるということだ。

それは、この世で一番幸せなことなのではないだろうか。